動物

僕の行きつけの人気のない公園で、今日猫の死骸を見つけた。
といってももう1週間以上はたってるんだろうか。
ちょっとゾンビ化してたので、市の死骸何とかセンターみたいなのに連絡しておいた。


これはまあしゃあないっちゃしゃあないのでアレなんだけど。
高校1年の頃、ふらふらと学校から早退して向かったこの公園に行き着いたとき
何ともこの公園は神秘的な空気を放っていた。

今でこそ全然人がいない場所なのだが
初めて行き着いた日は、凄く天気のいい日で、野良猫がのんびりしていて
さらに散歩に来た犬とかが芝生の上で寝っ転がっていたりと
とにかくこの世の楽園のような空気を出していた。

これが僕はどうにも気に入って
あれから何年経っても、この公園に逃げこんで精神を加速させるのが僕の生活の一つのパーツになっていた。

通い始めて1年ほど。僕はこの公園で一匹の野良猫を育てていた。
足の不自由な猫だった。犬か何かに食われたんだろう。

一応チンケながらも、僕も多少の生き物に対するルールのようなものはもっていて。
野良には餌はあげないというルールを持っていた。

この公園はまあアレなんだけど、他の僕が好きな野良猫のたまり場のようなスポットは
たいてい住宅地の中にあったり、周囲には学校があったり。
そんなところで野良猫に餌をあげるというのは、あまり良いものではないじゃないですか。
糞尿被害もあれば、衛生的にも良くない。子どもは猫がいれば触るし。
餌をあげ続けて警戒心の薄れた猫が、道路で轢かれていたりなんていうのも、今までいくつ見てきたかわからない。
といってもまぁ、餌をあげる人を責めることもできんので(気持ちはわかるし)
何とも言えないですね。何か条例だとか衛生面だとか、そんなハイレベルな場所にある話でもない気がします。
野良への餌やり問題は、何となくかわいそうとか、そんな素朴な話なのではないだろうか。


でも轢かれて死んでる子猫を見るたびに、僕は何か箱に詰めてあげたりとかしてたんだけど。
これはちょっとした、僕の正義感です。
たぶんそこまでするのが、人間の義務だと思いますし。




んでまあ、そんなことを思いつつも、公園で、しかも自分で餌のとれんような猫なら良いかなーって感じで当時は餌をあげていた。

学校に通うわけでもなく、行き場のない僕が公園に行くと
その猫が走り寄ってきてくれるのがどうにも嬉しかった。

あの時期の僕がもっていた、唯一の仕事といえるのかもしれない。
毎日毎日、その公園にいっては、その猫に餌をあげて、猫を膝の上にのっけてぼーっと何時間も過ごすのが、僕の日常になった。

あげるのはコンビニの猫缶と牛乳。(牛乳はあっためないと駄目だよ、とかそういうのはごめんなさいって感じです)
まず猫缶をあげて、その後空になった猫缶に牛乳をいれる。

その横で煙草を吸って、ぼーっとしているのが、何とも気が紛れる時間だった。

でもちょうど1年。ほんとにちょうど1年ですね。
ある日ぱったりとその猫が、僕の前から姿を消しました。


どこにいったのやら全くわかりません。もっともいくところなんて無いと思うけど。
人懐っこいネコだったから、親切な人が拾って帰ったのかもしれません。
そこから先はもう、想像の世界。
あとにもさきにも、僕が野良に餌をあげた最期の野良でした。





いなくなってからしばらくは、ちょいちょい見に行ってたかなぁ。
いつの頃からか、もうあの場所にあの猫がいるっていう期待が僕の頭から消えていって。
やがて僕は受験生となって、あの頃ほどの頻度で公園に逃げ込むこともなくなって。


動物の問題って難しいですよね。最終的には個人個人の倫理観に託されるものでしかないですし。
最終的に動物をモノのように扱う、ファッション的な、なんだろ。高級なペットを買うみたいな。
何かそういうのも別に間違っちゃいないのかなーとかちょっと思いますし。僕は好きじゃないですけど。



でもそのへんの野良に餌をあげて、闇雲に動物から野生を奪ってしまうっていう行為は
結局のところファッション感覚でペットを買うのと大して変わんないと思うのです。




僕の家で駆除されつつあるネズミさんだって、別に好きでダニをまき散らしてるわけでもないしなー。
それでも快適に僕らが生きるためにはいてもらっちゃ困るものだし。
悲しきかな、この国の法というルールの上では害虫害獣には権利は存在してないのです。
無闇矢鱈と殺されない権利も動物にはなくって。人間側に無闇矢鱈に殺さない義務があるだけなんですよね。
別に蚊を叩いて殺しても何の罰も無いじゃないですか。そんなの作っても生きづらいだけだし。



でも蚊を殺すのにも気がひけるくらいに優しい僕は、蚊が現れるたびにそっと窓の外に誘導するんだよなー。
マジで僕は心優しい少年だかんなー。生き物の命の尊さとか考えちゃってるかんなー。